山陽新幹線での居眠り運転

2003年、2月26日、JR山陽新幹線岡山駅で、東京行の新幹線が、所定の位置より約100m手前で止まり、3両ほどがホームからはみ出したままになりました。車掌が運転席に駆けつけると、運転士は腰かけたまま眠っておりました。
運転士は停車後も車掌に起こされるまで眠り続けていました。この運転手は体重が100Kgを超える肥満タイプであり、「5-6年前から睡眠中に何度も目が覚める」と周囲に話していました。

 ⇒ 検査の結果、SASであることが判明。


日本におけるSASによると考えられる事故

2005年11月 名神高速道路で多重衝突事故(7人死亡)
 ⇒弁護人が鑑定を求めた結果、SASと診断

2004年3月 羽田発山口宇部行の全日空航空機で機長が居眠り
 ⇒2004年7月 訓戒処分(SASと緊張感の欠如が複合したと判定)

2003年10月 名古屋鉄道新岐阜駅で電車がホーム端の車止めに衝突
 ⇒2005年3月 書類送検
   2006年2月 業務上過失致死傷罪(SASの診断がされたが責任能力ありと判定)

こんな事件もありました

 裁判官が居眠り
  ⇒2001年 埼玉県の浦和地裁で殺人事件の公判中に男性判事が居眠りしていると
    傍聴人より指摘

 試験官が居眠り
  ⇒2007年 福島県での大学入学試験中に、試験管を務めた男性助手がいびきを
    かいて居眠りをしているのを受験生が指摘

Findley et al : Automobile accidents involving patients with obstructive sleep apnea,  Am Rev Respir Dis 138:337-340,1988

睡眠時無呼吸症候群のページ
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SASによる事故


世界におけるSASによると考えられる産業事故

スリーマイル島の原子力発電所事故 (1979年)
 急停止後の炉心の冷却に失敗し、燃料が融け、周辺地域に放射能が漏れる
 ⇒作業員の睡眠不足(疲労)による人的ミスが原因と考えられている

スペースシャトル・チャレンジャー号の打ち上げ直後の爆発事故 (1986年)
 打ち上げから73秒後に突如爆発、シャトルの各部分はb区初による空気応力で空中
 分解した後に大西洋に落下し、クルー7名の全員が死亡
 ⇒作業員の長時間労働と睡眠不足が原因と考えられている

チェルノブイリ原子力発電所事故 (1986年)
 原子炉が止まった際に備えた実験を行っていたところ、制御不能に陥り、休止中で 
 あった4号炉の炉心が融解、爆発したとされる。爆発により原子炉内の放射性物質が
 大気中に多量に放出された
⇒作業員の睡眠不足による不適切な対応が原因と考えられている

その他
 アラスカ沖のタンカー座礁による原油大量流出事故 (1989年)
 豪華客船スタープリンセス号の座礁事故 (1995年)
 アメリカミシガン州での列車衝突事故 (2001年)

 1988年、Findleyらは米バージニア州の運転・事故記録を調査し、SASの患者は健常者の約7倍の事故発生率であったことを報告し、さらにSASの重症度が増すにつれて事故率が高くなっていることも明らかにしました。
 Georgeらは、運転シミュレーターを用いた研究で、SAS患者はハンドル操作ミスの回数が健常人よりも多いばかりか、血中アルコール濃度が約1mg/ml(酒気帯びの基準の約3倍)の飲酒群よりも有意に多いことを報告しています。同様の調査研究はアメリカのほか、カナダ・スペイン・スウェーデンなどからも報告されており、日本でも複数の報告があります。このようにSASと交通事故の間には明確な関連性があります。
 日本でも平成14年の道路交通法改正において、免許の拒否、保留、取り消し又は停止の対象に病気として、「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」が挙げられており、免許申請時及び更新申請時に申告すべき症状として、「十分な睡眠時間をとっているにも関わらず、日中活動している最中に眠り込んでしまうことが週3回以上ある方」が明記されました。
 しかし、重要なことは、適切な治療を受ければSAS患者であっても健常人と何ら変わりはないということです。このような道交法の規制がネックになって患者が生活上の不利益を被ったり、病気を隠すために受診抑制が生じたりしないようにしなければなりません。



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