SASの有病率は30-60歳の男性の4%、女性の2%と言われます。これは1993年に報告されたYoungらの成績に基づくものです。彼らの報告は、当時としては最も大規模であり、信頼できるものでありました。その結果、無呼吸低呼吸指数(AHI:1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数)が5回/時以上の睡眠呼吸障害の頻度は男性24%女性9%でした。AHI5回/時以上で、かつ日常生活に支障をきたすほどの日中の眠気がある症例をSASとすると、男性の4%、女性の2%がこれに相当しました。現在SASの有病率としてこれが引用されることが多いです。
我が国の地域一般住民1200人を対象としたSASの調査によれば、習慣性いびきは男性の24.6%、女性の5.1%に認められ、昼間の耐え難い眠気あるいは不眠などの睡眠障害を伴うSASハイリスク群は、男性の11.2%、女性の2%にみられました。夜間ポリソムノグラフ検査の結果、一般人の有病率は1.7%(男性3.3%、女性の0.5%)と推定されています。
SASは臨床の男女比は8:1位の著明な男女差が認められているものの、疫学的な調査では、2-3:1位です。しかし、実際の医療機関受診数は8-10:1程度であって、これは女性が医療機関になかなか受診しないことや、いびきに対する嫌悪感が男性に比べて強いことが考えられます。また、閉経後の女性でSASが増加することより女性ホルモンの関与も疑われています。
SASのリスクファクターとしては第一に肥満、特に中心性肥満が挙げられます。しかし、肥満者の全員がSASというわけでもなく、また、やせている人にもSASは認められるため、あくまで危険因子のひとつであります。肥満以外には顎顔面形態、鼻閉・鼻中隔弯曲症などの鼻の問題、アデノイド・扁桃肥大、女性では妊娠や閉経、飲酒がリスク因子としてあげられます。日本では高度の肥満者は欧米と比べて少ないものの、SASの割合は大きな差はありません。その理由として、日本人は長顔で顎が小さいために咽頭腔が狭くなっているという顎顔面形態の影響が考えられています。